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通夜で妻の妹に会った。

立て替えてもらっていた花代の半分を渡した。
最初は「いいですよ、いいですよ」と固辞していたが、とにかく、こんな場所でお金の押し付け合いをするのは良くないから、早くもらってと言って、やっともらってもらった。
「じゃあ、今度、お姉ちゃんに送っておきますね」
と言っていたので、「それは、いいけど」と答えた。

会場の入り口で妹と親しい親戚と妹が話し込んでいたので、自分は先に会場に入って座った。
妹と話したいことが色々あるが、離れてしまうと、難しくなるかもしれない。
自分はぽつんと座っていた。
妹は親しい親戚の近くに座るかもしれない。
そう思っていたら、「お兄さん、隣、いいですか?」
と言って妹が隣に座ってきた。
察するに、妹の方も、こういう場で、最も近しいのは自分の方なのかもしれない。
皮肉なことである。
あまり、付き合いがあった方ではないが、こちらの方も姉に影響されて、完全に自分を毛嫌いしている訳でなないということはなんとなく察した。
心なし、力を得たような気がした。

式が始まるまで、当たり障りのない話をしていた。
終わったら、用意されている食事の席に誘おうと思っていた。

式が終わって、みんがが立ち上がって出口に歩き出したとき、
「お兄さん、まっすぐ帰るんですか?」妹から離しかけてきた。
「少し話せる?」自分は食事の会場に誘った。
「いいですよ」
妹も自分の目で確認したかったことがあるのかもしれない。

お互い車で来ているので、ウーロン茶で乾杯し、並んでいる料理をつまんだ。

妹は心配していると言っていた。
妹の母、つまり、妻の母も子供たちの将来を心配し、よりを戻すことを望んでいると言っていた。
「□□が可哀想。お母さんも言ってるよ」
と上の娘のことを口にした。
そういえば、妻の母親も□□のためによりを戻して欲しいと言ったことを覚えている。
妹にしても、その母にしても、肉親として認識しているのは、上の娘までなのかなと感じた。
下の娘が生まれたのは、もう、首都圏に移ってからなので、仕方ないことなのかもしれない。
別に差別する気があって言っていることではないと思うが、少し、下の娘が不憫に思えた。

なんにしても、妻側の肉親が元に戻ることを望んでいるということは心強い。

妹は、あまり姉から詳しく聞いている訳ではないと言う。
本当かどうかはわからない。
それではということで、自分が話せる範囲で説明した。
特に弁解や、向こうが悪いという話はしなかった。
むしろ、自分が悪いので、妻が許してくれるまで、長い目で待つということを伝えた。
戦おうとしている訳ではなく、みんながハッピーになるために頑張っているので、応援して欲しいと妹に頼んだ。
妹の方は、あまり姉と話す機会はなく、多くを語らない姉なので、力になることはできないと思うが、連絡はしてみると言っていた。
自分と話して、妹が本当に自分のことを理解してくれたかどうかは分からないし、妹が姉に言ってくれるお陰で劇的に良くなるとは期待していないが、それでも、外堀に味方がいてくれれば随分違うと思う。

帰る間際、妹の携帯番号とメールアドレスを聞いた。
そう言えば、自分は妻の親戚の連絡先を、まったく把握していない。
「●●お母さんが私の電話番号知ってますよ」
自分の母親が知っているということを妹は言った。
そう言えば、1~2年前は、自分の母が頻繁に老人ホームに入っている、向こうの母の世話をしに行き、妻の妹とも連絡を取り合っていたことを思い出した。

式場を一緒に出て、面倒かけるけど、宜しくと伝え、お互いの車が置いてある方向に分かれた。

季節はずれの冷たい雨が降る夜だった。

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連鎖

今日、また妻から親戚に不幸があったという電話が入った。

続く時は続くものである。

今度は妻の母方の叔父である。
長く難病を患っていた。

妻の継父が3年前に亡くなって以来、これまで身内に不幸はなかった。
それが、先週、今週と立て続けである。

一体、どういう巡り合わせなのだろうか。

今回も自分に出席を依頼してきた。
今度は近い身内なので、妹と連名で花を添えたいという。

自分は承諾した。
もちろん、先日、学資保険から借入をしてまで、火災保険や固定資産税を支払い、その上に先週の葬儀の香典を出したばかりなので、懐には打撃である。
心の中は痛い。

「花代は後で、いつもの仕送りと一緒に振り込んでおくよ」

香典はいくらがいいだろう。
2人で相談した。
花を出すのだから、1万円で良いのではないか?
妻はそう言った。
近い親戚で1万円でいいの?
自分は聞いた。
妹がいくら出すか聞いてみる。
妻が言った。

まだ妻から妹がいくら香典を出すのかも、どこで葬儀が行われるのかも、連絡が来ていないが、明日は通夜に出席するために、午後は半休を取る予定である。

家族にしても、仕事にしても、自分の周りで大きなうねりが出始めているような感覚がある。
今のところ、決して自分に心地良いうねりではない。
つらいことの連続である。

だが、変化している。



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告別式の朝

告別式の当日、有給を取ったので、ついでに普段は行けない郵便局に朝一番で行こうと準備していた。
5年に1度の火災・地震保険、毎年の固定資産税、生命保険等、この時期に一度に請求がきて、手は付けたくなかったが、上の娘の学資保険から借り入れる必要が出たからである。

それが済んだら、白いワイシャツがなかったので、取り合えずカラーのワイシャツのまま、黒の礼服を着て、早めに家を出て、シマムラでワイシャツ買い、その場で着替えようと思っていた。

告別式は正午から。あまり、時間に余裕がない。


そんな時、妻から携帯に電話がかかってきた。

今日の告別式出席の確認だと思った。

それがどうも、そうでもない。

昔から歯茎が弱く、今、歯医者に掛かっているのだが、治療が長いこと、歯医者があれもこれも片っ端から治そうとすること、最小限で良いと言ったら、突然、高圧的になり、治しておかないと、後で大変なことになると脅されたこと、そういう態度を取る人間が一番苦手だということ、職場の嫌な年寄りのこと、色々なことを話していた。

最後に、高校に行っている上の娘がもらって来た学校からの通知のことを出してきた。
「7月からの高校授業料無償化に伴い、4月、5月、6月の振込手数料がPTA負担となります。従って、以下の金額を引落日までに入金しておいてください」

「なんで。無償化になると、その前の授業料の振込手数料がPTA負担なんだ?」

「さあ」

「とにかく、分かった」

結局、用件はそれだったようだ。

それにしても、それまで40分程度、妻は、ほとんど一人で話をしていた。



電話を切ったあと、急いで郵便局に行き、一度、家に帰り、着替えて出た。

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風が動く

今日、夜、家に帰ってドアを開けたとたん、携帯が鳴った。
妻からである。

妻の妹の夫のおじいさんが亡くなったと言う。
妹夫婦はこちらの方に住んでいる。
自分の家から50キロほど南に行ったところである。
妻が今、住んでいる首都圏とはほど遠い。

通夜と告別式があるのだが、妻自身は行けない。
もし、貴方が行けないなら、妻の兄に言ってお香典だけでもお願いすると言う。

もちろん、こちらから行くよと直ぐに伝えた。

妻は香典分は今度の仕送りから引いてくれと言っていた。

もちろん、そんな必要はないと答えた。

妻は安堵したようである。

「それから・・・ この間のメールありがとう」
妻が言った。

「何が?」
どのメールか、良く分からなかったので自分は尋ねた。

「○○のこと褒めてくれて」
先日、下の娘がこちらから帰った後、娘がとても成長して、いい子になっていたこと。娘を産んでくれてありがとう。というメールを妻に出した、そのことだった。

その時は、いつものように無視だったが、よほど嬉しかったのだろう。
今になって礼を言ってきた。

「それから、これはいいことだか、悪いことだか分からないけど」
続けて妻は言った。

「もう、貴方とやり直すことはできない。これ以上、長引かせたくない。だから親権は貴方に渡すから別れて」

ついに切り出して来たかと思った。
ただ、親権を渡すという意味が分かりづらい。

「親権渡すって、2人ともこちらによこすってこと?」
自分は聞いた。

「2人がそう望むなら」

一瞬自分は考えた。
別居騒動当初、2人の娘さえ、いや、1人でもこちらの手元に残るなら、離婚しても良いかもしれないとまで考えたことであった。

だが、
「俺の望みは、あくまで△△(妻)と一緒に暮らすことだよ。そのために時間掛けたっていいよ。もう少し考えてみて」
と自分は答えた。

「もう気持ちが戻ることなんてないよ」
妻は言った。

その後は、恨みの繰り返しだった。
生活が苦しくて、毎日毎日、心配で夜も眠れなかったこと。
前の会社を辞めさえしなければ、こんなことにはならなかったこと。
3度もガンの手術をした父親の見舞に最後まで行けなかったこと。
最後は既に意識がない状態の父親しか見られなかったこと。

全部、貴方が悪いと言って泣きじゃくっていた。

何か、事実と違うことを幾つか言っているし、身勝手とも思えないこともないことを言っている。

特に反論はしなかった。
何を言っても、過去の恨みに囚われて生き続ける性格が変わることはない。
特に継父に対する恨みつらみをさんざん、自分に吹き込んだのは当の妻本人である。
死んだ人というのは、それだけで浄化されるのだろうか。
自分が死んだら、良い人に戻るのだろうか。

「人はいつだって、やり直しが利くんじゃないのかな」
反発されることは分かっていたが、言わずにいられなかった。

「今の俺は、前の俺とは違うし、もう、心配させないよ」

言っても無駄なことであった。

「もう、これ以上、振り回されるのは嫌なの。
□□(上の娘)には、私が死んだらお墓には入れてねって頼んでおいたから」

妻は野たれ死ぬことを前提に話しているようである。
今はもう、厳しいながらも少しずつ安定を取り戻しつつある自分がいて、そこには妻が求めていたものがあるにも関わらず、最も恐れていた困窮を選ぶ。
なんとも皮肉なことである。
それほどに激しく自分を憎んでいる。

何を言っても無駄と分かっていても、自分はできる限り穏やかに、今まで悪かったこと、もう心配させたりしないということを説いた。

「今日はもう、話したくない」
妻は言った。

「そう。じゃあね」
強引に話を続けても逆効果なことは分かりきっているので、妻の意思に従った。




風は動いた。

どこに向かって吹いているのかは分からない。

感情をむき出しにして、泣くことは決して悪いことではないと思う。
心が溶けてきているのかもしれない。それで気持ちが治まることもあるだろう。
しかし、それだけで治まるなどという、都合の良いこともないだろう。

でも、諦めない。
諦めなければゲームセットにはならない。

偶然のサイコロはいつも最後は自分に微笑む。
崖っぷちを歩いていても、何故かぎりぎり生き残る。
振り返ればそんな人生であった。
もうサイコロを使わなければならないような生き方はしないから、今一度だけ、微笑んで欲しい。

今の会社に入社してから、告別式の日が丁度半年に当たる。
初めて有給が発生する。
絵に描いたような都合の良い符合である。

良い風向きの象徴でありますように。



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テーマ : 日記というか、雑記というか…
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成長

下の娘が帰った。

また、この家の火が消えた。

いる間がとても賑やかで幸せなだけに、いなくなった時のギャップが激しい。

娘は冬休みに来た時と比べ、とても成長した。

たくさんの漢字が読めるようになった。
ローマ字が読めるようになった。
話題が豊富になり、片道6時間の車の中でも以前のように、話すことがないからつまらないと言うことがなくなった。

カッとなると、コントロールが効かなくなる性格はまだ直らないが、それでも、ちょっと前に比べると見違えるように辛抱強くなった。
それと同時に、良く気づく子になった。

9日間の滞在だったが、自分は平日、仕事だったので、まる1日一緒にいられるのは、2日間だけだった。
その2日間、今回は好きなだけ遊んでやった。
他の日は父親が帰ってくるのをただ、待つだけの日々だったが、それでもとても喜んで帰った。

この子と毎日一緒にいられたら、どんなに幸せだろうか。
娘もそれを望んでいる。
あちらの生活は、つまらないし、母親がつらく当たるので、つらいと言う。

それでも母親を選ぶ。
母親の引力というのは、それだけで大きい。

「パパ1番好き。ママ2番」と言う。

それでも、どちらと一緒に暮らすかと問えば、「ママ」と答えるだろう。
最近はそういう質問はしないことにしている。
単に、娘を困らせるだけだし、もう取り合いを挑むことはしない。
自分の望みは、あくまで、もう一度、家族4人で暮らすことである。

「ママのこと助けてあげてね」
別れ際、娘にそう言った。

妻の心の氷を娘と力を合わせて溶かせるように。

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プロフィール

Author:かえで
45歳。並大学工学部卒。電気メーカ10年勤務。脱サラして自営10年。不景気で破綻。妻1人、子2人。住宅ローン有。現在アルバイトのドライバー。月収30万円行かず。さてどこまで生き延びることができるかな。

これまでの経緯
2009年6月。妻からもう、愛していないと言われながらも、なんとかもう一度、やり直そうと頑張ってきたが、ついに離婚を切り出される。
説得の結果、早急な離婚は回避できたが、2009年内一杯は別居、その時点で気持ちが変わらなければ離婚という約束になった。
自分はアルバイトを辞め失業状態で1人、前職時代に建てた地方の持ち家に。妻と2人の娘は継続して首都圏で小さなアパートを借り別居生活がスタート。
再び家族がまとまることを目指し、妻へのラブコールを継続。
それと同時に仕事探し。
2つの難題を抱える毎日。

昔のコネを使ってようやく再就職できたが、アルバイト時代よりも安い給料となる。
住宅ローンと自分の生活費に加え、妻と子供への仕送りで生活は更に困難に。
そんな中、もうすぐ約束の期限が来る。

約束の期限が過ぎたが、妻の反応は無し。
嵐の前の静けさか。

2010年4月。ついに妻が痺れを切らして離婚を再度切り出してくる。離婚できるなら親権をこちらに渡しても良いという条件を付けて。自分の希望は、あくまでもう一度、家族4人で暮らすこと。子供は可愛いが、妻が一緒でないなら考えることはできない。時間が掛かっても良いと返事。そんな中、妻の周りで不幸が続き、代理で葬儀に出席。妻の妹に葬儀の席で会い、直接話す機会を得る。動かなかった風が動き出す。
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